今日の一曲

ビートルズの楽曲は、全曲カバーされているということを初めて知りました。
さすが偉大なバンドであります。どんなミュージシャンでも普通はカバーする気もおきない曲って必ずありますからね。それを考えるとすごい話です。
今日は時間があるので、その中から何曲か紹介します。


まずは『ヘルプ!』です。
ビートルズの主演映画『ヘルプ!4人はアイドル』のテーマ曲で、最近では『開運!なんでも鑑定団』のテーマでも有名です。
今回紹介するのはディープ・パープルによるカバー。


Deep Purple - Help!


1968年の作品ですので、ヴォーカルがロッド・エヴァンス、ベースがニック・シンパーというあんまり有名じゃない顔ぶれになっています。
原曲に比べて非常に緩やかな感じですが、後半のソロは当時流行だったアート・ロック(こんな言葉20年ぶりくらいに使った)っぽいアグレッシブなアプローチになっています。


次は『カム・トゥゲザー』です。
名アルバム『アビー・ロード』のオープニングに収録されている曲で、69年にビルボードでは1位を獲得しています。
「ドラッグの教祖」ティモシー・リアリーアメリカ合衆国カリフォルニア州知事選挙に出馬を表明した際、応援ソングとして作られた曲(ただしリアリーはすぐに逮捕された)で、またジョン・レノンが「ビートルズ時代の曲の中で一番好きな曲」と語ったことでも有名です。
今回紹介するのはエアロスミスのカバー。


Aerosmith - Come Together


結構原曲に忠実なカバーです。原曲よりちょっとベースがおとなしいくらいでしょうか。
スティーブン・タイラーのヴォーカルがすごくはまっていて、特に「Come Together」の部分は原曲以上にカッコいいと個人的には思っています。
78年にシングルでリリースされ、ビルボードで23位。この後エアロスミスはドラッグ問題が表面化し、長い低迷期に入ります。


続いては『アクロス・ザ・ユニヴァース』。
アルバム『レット・イット・ビー』に収録されている曲で、松尾芭蕉に影響を受けたとも言われる歌詞が印象的なナンバーです。
ジョン・レノン独特の世界観がそのまま投影されたようななんとも柔らかいメロディは、聴き手をお伽の世界へと誘うような魅力があります。
今回紹介するのはフィオナ・アップルのカバー。


Fiona Apple - Across The Universe


映画『カラー・オブ・ハート』のサントラに提供された一曲。
原曲のイメージを損なうことなく彼女の物憂いヴォーカルがマッチしていて、なかなかこちらに迫ってくるような感触に仕上がっています。
フィオナは18歳のときにアルバム『Tidal』を大ヒットさせた天才少女ですが、強迫性障害その他で苦しんでいるという側面もあります。最近は活動が滞っているようで残念です。


最後は『マネー』です。
アルバム『ウィズ・ザ・ビートルズ』のラストに収録されている曲で、もともとはパレット・ストロングのカバーです。ですからちょっと趣旨からずれるかもしれませんが気にしません。
日本では『プリーズ・ミスター・ポストマン』のカップリングでもあったそうです。
今回紹介するのはフライング・リザーズのカバー。


Flying Lizards - Money

D


これは本当に斬新と言うか、実に奇怪な出来に仕上がっています。
フライング・リザーズは北アイルランド出身の現代音楽家デヴィッド・カニンガムが結成した実験音楽ユニットで、70年代末から80年代初頭にかけて活躍しました。
楽器をまったく弾けない彼は、高価な機材を一切使わず、ドラムの代わりに段ボールや鉄板を叩き、ラジカセや風呂場のエコーを用いて録音。こうして完成したこの曲とアルバムは米英のチャート上位を獲得し、かの有名な「たった20ドルでヒット作ができる」という伝説を生みました。
彼が打ち立てた「機材の可能性ではなく、機材の制約からいかに自由でいられるか」という精神は、現代でもテクノ・シーンへと受け継がれています。


しかしこうしてカバーを聴いてみても分かりますが、ビートルズというのはやっぱり偉大ですね。すごい。