今日の音楽

先週と先々週の『週刊AKB』に、SKE48秦佐和子さんが登場して、その知性と挙動不審と間違えられるくらいの謙虚ぶり、異常なくらいのシャイっぷりを存分に見せつけていましたが。
前からSKE48の番組を見て注目していましたので、地上波であの特異なキャラが話題になるのは嬉しい限りです。全然大阪人っぽくないのが良いです。
彼女は「SKE48のオーディションの最終審査のときBerryz工房の曲を歌ってしまい、秋元康に途中で止められたけど無事に合格した」(ソース不明)とか妙なエピソードが多いのですが、個人的には「大学のドイツ語の講義で聞いて以来、クラフトワークが好き」(これは本人がブログで書いてた)というのが面白いと思いました。
22歳でクラフトワークとか、狙っているとしてもなかなかいいところを突いている気がしますし。


クラフトワークは70年代初めから活躍するドイツの電子音楽集団で、テクノポップの先駆け的存在です。
彼らがいなかったらテクノもヒップホップもユーロビートも存在しなかった、と言い切れるくらいで、本当にたくさんのミュージシャンに影響を与えています。
YMOもペットショップ・ボーイズもビースティー・ボーイズプロディジーも、みんな彼らの影響下にありますから。
音はいかにもドイツ人が出しそうなストイックなもので、それでいて妙に乾いたユーモアなんかもあったりして、すごく独自性がありましたっけ。
一時期は活動が停滞している時期もあったのですが、最近はライブも精力的で、まだまだ老いてなお盛んなところを見せています。
またもみ上げをバッサリ剃り落としたいわゆる「テクノカット」も彼らのオリジナルです。


日本で発売されている彼らのアルバムは、ほとんど英語で歌われている(歌のないインストも多い)のですが、本国ではドイツ語ヴァージョンが流通しています。
ドイツ語の講義で聞いた、というのでドイツ語ヴァージョンを。


Kraftwerk - Die Roboter


彼らは無機的なものを題材にすることが多いのですが、この曲でもロボットをコンセプトの主題に置いています。
シンプルなメロディーが反復されることと、ストイックに徹して無駄な音を極限まで排していること、そして無機質かつデフォルメされた音という特徴は、この曲でも十分に発揮されています。
チャカポコしたリズムがアナログっぽくてコミカルで、今聴くとギャグみたいに思えなくもないんですが、ヴォコーダーによる「We Are The Robot」のフレーズは、当時テクノポップのシンボルでした。
ロボット(今見るとマネキンみたいですが)によるステージングというのも、あの頃としては最先端でしたね。


Kraftwerk - Trans Europe Express


こちらはドイツ語ではありませんが、彼らの代表曲です。
金属的なホワイトノイズで表現されるレール音、緊張感あるメロディが交錯する印象的な曲ですね。
テクノ・アンセムとして有名なほか、サンプリングの元ネタとしてもよく使われています。


ちなみにDTMが発達した今では信じてもらえないような話ですが、当時彼らが使用していたアナログ・シーケンサーというのは大変面倒くさいシロモノでした。
何しろ今のデジタル・シーケンサーとは違って、音程も音の長さも音符や数値では指定できなかったのですから。じゃどうやって指定したかというと、何とヴォリュームを使ってでした。そしてピッチは耳で聞いて決定していました。またメモリも小さく、音数は1フレーズ程度が限界でした。
こんな程度の性能ですから、それで音楽を作るのにどれくらい時間がかかるかを考えると、比喩や冗談じゃなく本当に気が遠くなります。当然手で普通に弾いたほうが圧倒的に楽で早かったはずです。
でも彼らはそれでもあえてシーケンサーを使ったわけで、そんなところにテクノ・スピリッツが感じられたりします。