昨日の音楽

渡り廊下の新曲がフォークダンスということもあって、昨日はアイリッシュ・トラッド系の流れを汲んだ音を聴きながら現地へと向かいました。というわけでいくつか御紹介。


まずはそっち系統の元祖的存在のボーグスです。
ボーグスはアイリッシュ・トラッドとパンクの融合という明確なテーマを持ったバンドで、主に80年代の英国で活躍しました。
シェイン・マッガワンの酔いどれヴォーカルと、小気味いい性急な演奏、そして伝統楽器と電気楽器とによるバランスの取れたアレンジが持ち味で、ピークの頃はそれが絶妙の折り合いを見せていました。


The Pogues - Dirty Old Town


フォークの古典曲ですが、若い世代にも訴えかける作品として生き返っています。


The Pogues - Fiesta


トラッドとパンクだけではなく、ラテン・ミュージックとの融合も目指した異色曲。
ものすごくスピード感があって、お祭り気分で聴ける楽しい曲です。


The Pogues feat. Kirsty MacColl - Fairytale Of New York


この曲はカースティ・マッコールとのデュエット。
ニューヨークのアイルランド移民夫婦を主人公とした胸打つ名曲で、当時全英2位を記録したほか、最近でも「英国人がクリスマスといって思い浮かべる曲」の投票で1位になるなど、英国では世代を超えて受け入れられています。


次は一発屋として扱われることも多い、デキシーズミッドナイト・ランナーズです。
デキシーズは英国バーミンガムで結成されたバンドで、リーダーのケヴィン・ローランドのワンマンバンドであったためか、アルバムを出すごとにメンバーも音楽性も全然違う、ということで有名でした。スタイル・カウンシルミック・タルボットも元ここのメンバーでしたっけ。
ケヴィンの強烈な個性ゆえバンドの運営は難しく、わずか3枚のアルバムを出しただけで解散してしまいますが、今でも多くのファンがいるようです。


Dexy's Midnight Runners - Come On Eileen

D


全米・全英1位、ブリット・アワード受賞という大ヒット曲。バンジョーフィドルを使用したケルティック風のサウンドと、ケヴィンの哀愁を帯びたヴォーカルが良いです。
日本でもヒットしましたが、この曲しか知られてないので、今ではすっかり一発屋扱いです。


Dexy's Midnight Runners - Geno

D


こちらはデビューの頃の音。上記の曲とはまったく趣が違います。
ホーン・セクションを大々的に導入し、ソウルや英国R&Bというルーツ・ミュージックを展開した、当時としては異例の音でした。ちなみに全英1位。


このへんからさらにマイナーになってきます。もうほとんどの人が知らないかも。
次はスコットランド出身のウォーターボーイズです。
もともとは詩へのこだわりを深いエコーの中に秘めたニュー・ウェーブ・バンドといった趣だったんですが、煮詰まった挙句ルーツ回帰をトラッドへの接近という形で表して、良心的なロックバンドの一つに数えられるようになりました。


The Waterboys - Fisherman's Blues


それほどヒットはしませんでしたが、フィドルの音が印象的なナンバーです。
その後ウォーターボーイズは、リーダーのマイク・スコットソロ・プロジェクト化しつつも、現在まで活動を続けています。


アイリッシュ・トラッドは英国だけでなく、米国にも影響を及ぼしています。その筆頭がボストン出身のドロップキック・マーフィーズです。
彼らはランシドのティム・アームストロングに見出されたバンド(「ランシドの弟分」とか言われてた)で、バグパイプアコーディオンマンドリンなどを多用するなどアイリッシュ・トラッドの影響を色濃く受けており、アイリッシュ・パンクの代表格として活躍しています。
トラッドの楽器がタイトなエイトビートに絡む音は、なかなか良い感じです。


Dropkick Murphys - I'm Shipping Up To Boston


この曲はMLBボストン・レッドソックスのクローザー、ジョナサン・パペルボンの2007年テーマ曲として広く知られているほか、NFLニューイングランド・ペイトリオッツが2007年に16戦全勝のリーグ史上初の偉業を達成した際にもこの曲がテレビ放送で流されるなど、ボストン市民にとっては勝利の凱歌となっているそうです。


続いてはロサンゼルスのアイリッシュ・パンクバンド、フロッギング・モリーです。
80年代のメタルファンなら知ってるかも知れない、ファストウェイ(元モーターヘッドのエディ・クラークが結成)のヴォーカルだったデイブ・キングが中心となって結成されたバンドで、元々はロサンゼルスにあるアイリッシュ・パブの常連客だったメンバーが、そこでプレイをするディブに興味を持った事がきっかけで始まりました。
ドロップキック・マーフィーズとともにアイリッシュ・バンクの双璧で、大人数を生かしてノリだけで突っ走る曲から、しっとりとしたバラードまで幅広くこなせるバンドです。
また親日家で2004年以降毎年来日しているほか、ディブが日本で結婚式を挙げるなどしています。


Flogging Molly - Drunken Lullabies


この曲はセカンドアルバムのタイトル・ナンバーで、痛快なまでのノリのよさが身上です。


最後は多国籍バンド、ゴーゴル・ボールデロ(表記はいろいろある)です。
ニューヨークで結成されましたが、メンバーの国籍はアメリカ(タイ系)、ウクライナ、ロシア、イスラエルエクアドルスコットランド(香港系)、エチオピアと幅広く、ヴォーカルのユージン・ハッツに至っては、チェルノブイリ原発事故によって故郷を離れ、7年にも及ぶ難民生活を経験した末にニューヨークに移住して音楽を始めたという経歴を持っています。
メンバー全員の持つ様々なルーツ・ミュージックの要素を融合した音楽が特徴で、アイリッシュに留まらずバルカン半島や中東、南米のテイストまで加わっているため、メディアからは「ジプシー・バンクス」と呼ばれています。
また難民体験を基にした人生観や国際問題を題材にしたパンク精神あふれる歌詞と、ヴァイオリンやアコーディオンを駆使しながらエネルギッシュに演奏するスタイルは、各地で高い評価を受けています。
ユージンはマドンナの初監督映画で主演に抜擢されるなど、そのキャラクターを生かした仕事を多く行ってもいます。


Gogol Bordello - Mala Vida


この曲はあのマノ・ネグラブラフマンが影響を受けたバンドとしても有名)のカヴァー。
ソウル・フラワー・ユニオンなんかを思わせる音がいいです。