内藤 vs 亀田

事前に亀田が判定で勝つであろうという予測を立てていたけれど、拍子抜けするくらいあっさり当たってしまいました。う〜ん。


試合自体は普通にいい内容でした。ほとんどクリンチもなく、緊張感のある試合だったと思います。
亀田長男は地味に強い選手になっていました。フットワークなしのアウトボクシングというどっちつかずのスタイルは相変わらずですが、防御力は非常に高くポイント稼ぎもうまく、ボクシングとしては文句のない完勝だったでしょう
「浪速の闘拳」「どつきあい」とか威勢のいい叩き文句につい幻惑されてしまいますが、相手が強くなると見せるアマチュアっぽいポイント稼ぎのボクシングこそが、亀田長男のボクシングの本質なのだと思います。日本の大ヒールみたいに扱われる一方で、本人は実は礼儀正しいいい子のようなのですが、大一番になるとついその飾らないいい子っぷりが出てしまうみたいで、そこが興味深かったりして。
一方の内藤については、このところの防衛線で見せた反射神経の衰えや、スタミナがあっても顔面がついてこないもろさを考えて、たぶん亀田のアウトボクシングに翻弄されて、パンチの精度もまし落ちて苦しむだろうという予想を立てていました。結果はほぼ予想通りだったんですが、しかし鼻がぽっきり折れているなかであれだけ闘えるのだから、やっぱり根性の人だったのだと思います。立派でした。


しかしいい試合だったんですけど、いまいち物足りなかったというのが正直な気持ちだったりします。
それは内藤が負けたからではなく、判定決着だからでもありません。やっぱり亀田戦なのだから、世間を仰天させるようなハプニングが起こると期待していたのにまったくなかったこと。これが残念。
思えば亀田兄弟の試合といえば、ボクシング好きの人からは「あれはボクシングじゃない!」と酷評されるのがもっともだと思えるくらい、胡散臭いものでした。はっきり言っちゃうとあれは、名前も戦績もよくわからないような、負けること自体を飯の種にしていた東南アジア人をぶん殴るショーでしたから。特に次男のは。
もちろん世間だってボクシングなど期待していなかったですし、TBSだってそれが解ってるから、まともなボクシングを提供しようとしてもいませんでした。


亀田戦に大衆が期待していたのは、想像もつかないハプニングです。審判のうそ臭い判定、インチキ臭い外国人選手、どっから見てもDQNな親父、相手へのリスペクトの欠片もない煽り文句、次男のレスリング、「反則上等、肘でもぶちこめ」という脇の甘いアドバイスなどなど。
亀田戦というのはテイストとしてはかつてあった『ガチンコ』などに近い、ハプニング満載のエンターテイメントだったんでしょうし、僕もそのように理解して見ていたんですが、それが普通にお行儀のいい試合をされるとどうにも困ってしまいます。
内藤という亀田劇場最大のライバルと激闘を繰り広げ、SSAの埋まり具合もけっこうよかったと思います(多分視聴率もいいでしょう)が、こんなクリーンなありさまではこの先移り気な一般を引きつけ続けていられるんでしょうか。
これからはまた対戦選手を吟味しまくった冒険しないマッチメイクで、地味に勝利を重ねていくだろうと思うんで、今回の内藤戦が亀田バブルの頂点になる可能性は高いと思います。来年は三兄弟トリプル世界戦興業とかやらないと苦しくなるかもしれません。
あ、それともすぐにベルト返上して次の階級に行くのかな。


僕は亀田長男の実力については認めてますし、意外とメディアに対してクレバーなところに感心もしてますし、三男も一度だけ見た試合ではかなりの才能を見せていましたし、あの親父さえいなければ兄弟は応援してあげてもいいかな、とは思ってるんですが、どうなることやら。